人間らしく働くための九州セミナーin沖縄

子どもの貧困解決策探る

講演する浅井春夫教授

「第27回人間らしく働くための九州セミナーin沖縄」(同実行委主催)は11月12、13日、沖縄県那覇市の県男女共同参画センター「てぃるる」ホールで開かれました。九州・沖縄をはじめ全国から労組関係者ら約360人が参加。新聞労連から労連本部の及川しほ書記、九地連労安担当の佐藤暢彦副委員長ら9人が参加し、「子供の貧困問題から見える親の働かされ方・働き方」をメインテーマに、労働問題全般について理解を深めました。

冒頭あいさつで、現地実行委の高嶺朝広実行委員長は「経済協力開発機構(OECD)の2012年報告によると日本の子どもの貧困率は16.3%で、中でも沖縄は全国一高い29.9%に上る。子どもの貧困の原因は親の貧困にある。今回のセミナーを、全ての子どもたちが夢を持って生きる社会をつくるための一助にしたい」と述べました。

記念講演では、立教大コミュニティ福祉学部の浅井春夫教授が「子どもの貧困からみえてきた労働の問題を考える」と題して報告。沖縄戦に端を発する孤児問題を長年研究している浅井教授は、「2008年は子どもの貧困元年といわれた。現在は第2次貧困ブームともいえる状況で、アベノミクスの下に子どもの実生活の中に貧困が事実として現れている」と指摘しました。具体例として、夏休み明けに10キロやせてきた中学生や、虫歯が20本あるのに治療されず総入れ歯にした子どもなどの事案を列挙。大学生が学校と労働生活の両立に苦しんでいる現状を挙げ、「貸与型奨学金という名の教育ローン制度によるブラックシステムが広がっている。結果的に一部の女子学生はキャバクラなどブラックバイトをすることもある」と述べました。

貧困の根底に非人間的で劣悪な労働問題があり、所得の再分配がほとんど機能せず、貧困の再生産サイクルが形成されているとも指摘。子ども時代に勉強する環境に格差が生じ、進学機会を逸して非正規就労などの低収入・低労働条件の仕事に就く悪循環を挙げ、「貧困は個人責任でなく社会構造的な問題。子どもは人生のチャレンジ権を奪われている。対策を怠ると貧困は拡大し再生産される。現代の労働問題の解決なしに子どもの貧困の改善はあり得ない」と警鐘を鳴らしました。解決策として、全国一律の最低賃金制度の確立と、同一価値労働同一賃金の原則に立った男女間賃金格差の是正を主張。「貧困世帯は長時間・深夜・不定期労働で家族関係を充実する時間さえない。家族的な時間を取り戻すべきだ」と提言しました。

パネルディスカッションは「子どもの貧困から見える親の働かされ方・働き方」をテーマに開催。コーディネーターに九州社会医学研究所の田村昭彦所長を迎え、パネリストとして、沖縄協同病院の雨積涼子医師、沖縄県教職員組合那覇支部の木本邦広委員長、母子家庭団体「しんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄」の秋吉晴子代表、沖縄県労働組合総連合の嶺間信一事務局長、沖縄大学法経学部の島袋隆志准教授の5人が登壇しました。

シングルマザーの秋吉氏は「沖縄で子どもの医療費は、いったん現金で支払った後に返ってくる仕組みだが、窓口現金負担は重く通院を控えることもある。支援は申請しなければ受けられない。一人親世帯は情報も貧困になりがちで、支援策を知る機会も少ない。せめて離婚手続き時にワンストップサービスで教えてほしい」と実情を訴えました。小児科医の雨積氏は「窓口現金負担は、貧困層を選択してブロックしてしまい、さらに追い込むことにつながる。救急外来に症状の悪化した子どもが飛び込んでくる。事情を聴くと、2、3日前から苦しかったが言い出せなかったという。両親が忙しく仕事を休めないのを分かっているのかもしれない。子どもの貧困は見えにくい」と述べました。小学校教員の木本氏は「病院に行けない子どもは、結局重症化し学校に行けなくなる。学校で問題を抱えていそうな子どもには、親の働き方が影響していることが多い。子どもが昼夜逆転生活に陥り、教員が電話で起こすこともある。子どものかすかなサインに気づいて寄り添っていきたい」と話しました。労働者団体の立場から嶺間氏は「相談に来る人で労働三権(団結権、団体交渉権、争議権)を知っている人はほとんどいないのが実情。パートに年休はないというのは間違いで、子どもが病気になれば看護休暇を取れる。労働条件について学校現場で教育する必要がある。世界で貧困と格差が広がってしまっている現状に危機感を覚える」と訴えました。ブラック企業について意見を述べたのは島袋氏。「大学にもキャリア教育があるが、大学からでは遅い。奨学金という名の教育ローンを抱えた学生が6割いる。卒業後の社会に明るい希望を見いだせず、ブラック企業に戦々恐々としている。問題の多くは非正規雇用に起因する。正規と非正規で連携できる道はないだろうか」と投げ掛けました。

総括として、田村氏は「雇用の在り方そのものが変わって来ている。貧困も多様化し、経済的貧困だけでなく、時間的、経験の貧困などもある。日本全体の働き方を変えていくような運動をしていくことが大事だ。人間らしく生活していき、家族へ責任を持つ労働者として生きていくために、働きやすい生活をどう実現していくか、気持ちを共有していきたい」と結びました。

2日目は同ホールと沖縄大学の2会場に分かれ、学習講演や働くルールを学ぶワークショップ、テーマ別7分科会を開催。このうちメンタルヘルスをテーマにした分科会には、約50人が参加。最後に、「人間らしく働くための2016沖縄宣言」を拍手で採択し、閉会しました。

山陽新聞労組の不当労働行為救済申し立て 証人尋問を傍聴支援

山陽新聞労組が岡山県労働委員会に申し立てしている「不当労働行為救済申し立て事件」に関する証人尋問が11月16日、岡山県庁分庁舎で開かれ、傍聴支援には新聞労連の仲間をはじめとした関係者約40人が集結、九地連からも役員が参加しました。

今回の救済申し立ては、一時金支給についてと2014年の夏季一時金支給に関する組合のあっせん申請に関して会社が出席しないという労働協約不履行による不当労働行為(支配介入)によるものです。2010年に労組が定年延長をセットにした大幅賃下げ提案を受け入れた際に、会社側との労使協議会で確認した一時金支払いの労使合意が成立するのかが焦点となっています。証人尋問で会社側は「発言は認めるが労使合意は無かった」とし、弁護士の質問には「分からない」「覚えていない」などと答弁するなど、傍聴席の労組側からは「信じられない」といった溜息が漏れ、会社側の答弁や姿勢は違和感を覚えるものでした。

今回の傍聴支援の詳細については、労連ニュースや争議弾圧対策部報告などを参照ください。次回は12月19日に、山陽労組の藤井書記長への証人尋問があります。山陽新聞労組は3人の少数組合です。引き続き、会社側や労働委員会に組合の結集力を見せていかなければなりません。

この闘争は、組合と会社の信頼関係、合意事項を根底から揺るがすもので、展開次第では今後の新聞各社の労使関係にも重要な影響を与える可能性があります。九地連としては今後も、できる限り結集と支援を送り続ける姿勢で臨んでいきます。

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