人間らしく働くための九州セミナーin熊本

「第28回人間らしく働くための九州セミナーinくまもと」(同実行委主催)は11月25日、26日の日程で、熊本市の東海大熊本キャンパスで開かれました。九州・沖縄を中心に全国から労組関係者ら約400人が参加。新聞労連からも及川しほ書記、九地連の犬塚政志委員長(南日本)、井上卓也副委員長(毎日)ら11人が出席しました。
テーマは「家族的責任を自分らしく果たす権利と健康」。設定の理由について、開会挨拶に立った現地実行委員長の阿部広美弁護士は「家事や育児、介護といった家族的責任は負担である一方、権利でもあります。しかし現在の働き方は長時間労働などを強いられ、その権利を果たせる状況にありません。このセミナーで参加者が自らの権利に気づき、実現するために何を変えないといけないのか、仲間たちと議論するきっかけになれば幸いです」と説明。「1日8時間労働のもとで家族と過ごせる当たり前の生活を実現していきましょう」と呼び掛けました。
代表世話人の田村昭彦氏(九州社会医学研究所)は「日本社会全体が『ブラック企業』になりつつあります。雇用・生活破壊に止まらず、労働者の健康問題も深刻で、パワハラやいじめによるメンタル不調を発症し、長時間労働により過労死、過労疾患に罹患するなど多くの課題があります」と指摘。一昨年から始まったストレスチェック制度は「約8割の事業所で実施されていますが、最大の目的とされていた医師による面接指導を受けた労働者は0.6%に止まっている。職場のストレスの原因となっている成果主義や長時間過密労働、パワハラの改善など安全衛生委員会などを活用し、十分な検討をおこなっていくことが重要」と訴えました。
続いて、群馬大の齋藤周教授=写真上=が「ワーク・ライフ・バランスと労働法の役割」と題して講演。冒頭に熊本市議会で女性議員が子ども連れで議場入りしたことについて触れ「議員が男女半々だったらあんなことは起こらなかっただろう」と議会の現状を嘆きました。齋藤氏は、労働者の権利強化の歴史を紹介した上で、あらかじめ決まった時間を超えて働いても残業代が支払われない「高度プロフェッショナル制度」や裁量労働制の対象者拡大を進めようとしている政府を批判。「残業代が出ない公立学校の教員は極めて長時間労働を強いられている。『残業代がなくなれば早く退社する』という政府の主張は事実に反する」と厳しく指摘しました。
メーンテーマ「家族的責任を自分らしく果たす権利と健康」についてパネルディスカッション=写真右=に移り、ひとり親で育児を経験したパネリストの田中勝子さんが「子供のために昼間は正規として働き、夜はコンビニなどを掛け持ちし、睡眠時間は3時間ほどしか取れないほど自分を犠牲にして働いたが、やっと細々とした生活が出来る状況でした。ひとり親に対して冷たい社会との認識を強く抱きました」と、シングルマザーを取り巻く現状を告発。働きながら子育てと熊本市から指宿市まで週に数回親の介護を行っている高峯明貴代さんは「現在の介護保険制度や介護休業制度は絵に描いた餅。現状に追いついていない」とダブルケアの深刻な問題を浮き彫りにしました。外食産業で働いていたご主人が過労、パワハラで自死された寺西笑子さん(全国過労死を考える家族会代表)は「仕事のための命では無く、命のための仕事だと伝えたい」と強調。「過労自殺は、若年層に移りつつある。社会に対して声を上げていかなければ過労死は無くならない。利益のために人を使い捨てにすることを許さない社会風土をつくっていかなければいけません。労働時間の適正把握をさせるのは労働組合です」と訴えました。
2日目の学習講演・テーマ別分科会は、シンポジウム「子どもの貧困と子育て」など10の分科会で100人から報告がありました。
第29回となる2018年は福岡県で開催されます。

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