長崎で九州・沖縄地連春闘討論集会

 新聞労連九州・沖縄地連の春闘討論集会は2月2日、長崎市の長崎新聞社で開いた。九地連加盟単組を中心に、新聞労連の小林基秀委員長をはじめ、東北地連、東日印刷、中国新聞労組の役員ら約30人と、長崎新聞労組組合員らが出席。2007年に発足し2期7年の間、新聞業界活性化策などを探った新聞労連産業政策研究会から3人を講師として招き、「産政研、再び~己(=敵)を知り、己を知る」をテーマに展開。「組織の壁、自分の壁」と題しパネルディスカッションも行い、新聞力強化の方策や必要な変化を受け入れられる組織作りについて話した。
開会にあたり、犬塚政志委員長は「産政研のレポートに、新聞について〝あなた方は簡単に滅びることが許されない〟という一文があり、私たちの使命を改めて考えさせられた。本日の内容を春闘に生かすなどして、これからも使命を果たし続けることができるよう頑張りましょう」と挨拶した。
 講演に入り、まずは高知新聞社の明神功さん=写真右=が、「フェイクの時代・地方紙の課題〜新聞とネット2018」と題し登壇。「米国のトランプ大統領の誕生によって、フェイクニュースが注目されるようになった。人間は信じたいものしか信じない。この5年でその風潮が露骨になってきており、真実か真実でないかは重要ではなくなってきている」として、新聞は事実を大事にしているものの、情報源としての存在価値は低下していると指摘。また、政治ニュースなどについて〝新聞は政権などを批判してばかりいる〟と抵抗感を抱く読者が増えており、批判を避ける社会になりつつあることにも触れた。
ネットは個人と新聞が同じ土俵で、新聞の権威的な裏付けが薄れる点など、ネットと新聞の相性の悪さを説明。ネットの活用の仕方として、クラウドファンディングでの調査報道の資金収集や、災害や事件事故の情報に特化したアプリ開発の事例などを紹介した。 
元中国新聞社員で医療ベンチャー企業に転職した登地敬さん=写真左=は、「変化に前向きな組織に」をテーマに講演。新聞社員時代に新規事業立ち上げに関わった経験などから、新規事業は少人数で始めるので、一人で何役もこなさないといけないこと(ワンオペ)や、新聞作りから外れ、意に染まない事業を任されることで、仕事への意欲が低下する人がでることなどを説明。「新聞社はすごく安定している。組織が完成し、分業制となっている。これは、現役社員は不安定な時期を経験していないことを意味する。変化が必要な時に大きなハンデでもある」と指摘した。
事業立ち上げには資金と人材が必要で、ノウハウを確保するため中途採用や業務委託、時には企業買収など様々な手法があることを説明。「何をするにもリーダーの存在が鍵を握る」と訴えた。
宮崎日日新聞社の高力秀雄さんは「新聞の商売の仕組み(損益分岐点解説)」と題して話し、新聞は読者に直接販売しているのではなく、販売店に降ろして読者に届けられていることを強調。新聞社から販売店に支払っているのは毎月千円程度と、1日換算では三十数円という低い金額で、販売店は毎日の配達だけでなく、集金や読者管理までしてくれるありがたい存在だとした。読者減少が進む中、新聞社だけでなく、販売店の経営は厳しさが増すことが予想され、どのように販売店網を維持していくのかが大きな課題だと話した。
携帯電話会社として知られるソフトバンクが、企業買収などによりNTTドコモやauよりも3倍、4倍の総資産を抱えていることなどを紹介し、新聞社も新聞事業にこだわらず、柱となる収益事業を育てるべきと主張。人材育成が大切で、特に、経理、労務、流通の知識や経験を多くの社員に持たせた方がよいと勧めた。
パネルディスカッションでは明神さんと登地さん、長崎新聞労組委員長の山口栄治さんがパネリストを、高力さんがコーディネーターを務めた=写真右。
高力さんは「組合にとって、会社は賃上げや労働待遇改善などの大きな壁となる。一方、組合は、会社が合理化などをなし崩し的に進めるのを防ぐ壁となる。組織を守るために壁は大切。ただ新聞社の壁は立派過ぎて、動かすことが難しい面がある」と問題提起。登地さんは「新聞社は、まだまだ余裕があるがゆえ、物事を進める時に、様子を見ながら慎重になりすぎる。本腰でやると決めずに始める傾向がある」と分析。単組書記長などを務めた明神さんは「当時は、組合は正論なのだから会社は受け入れるべきだという思いがあり、強く主張して、会社から反発を招いた」、山口さんは「昔に比べ組合員が激減するなどしており、組合が変わる必要性を感じ、委員長に立候補した。大会で出した見直し案について、『趣旨は賛同するが、説明が足りない』という指摘があり、いったん引っ込めた」など、経験を話しました。
組織は人の集まりであり、組織を変えるためには、構成する人の合意が大切であることを確認。変化を受け入れてもらうために大事なものとして、明神さんは根回しを、山口さんは提案者の最後までやり通そうとする熱意を挙げた。登地さんは構成員への説明材料として、中・長期的な展望の提示や、ITなどの技術の進歩を考慮することを勧めた。
明神さんは「リーダーや提案者は大変だ。いろいろと経験したが、うまくいかず、挫折した思いもあった。日々の業務や組織の決定に首をかしげるようなことがあっても、波風を立てずに、流されると楽なのだろうと思う。しかし、今回、講師として声が掛かった時、またやろうかなという気持ちになった。過去に挑戦したことで仲間を得ることができた。集会に参加している皆さんも、半歩踏み出している。新聞業界を活性化させるために、さらに踏み出しましょう」と呼び掛けた。

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